2020.05.19
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研磨加工の基礎知識│種類や手順について解説

研磨加工のイメージ画像

金属加工における仕上げ工程として施されることが多い、「研磨加工」。
光沢を出して外観・美観の向上が得られるだけではなく、表面の微細な精度調整にも役立ちます。

今回の記事では、「研磨加工」について詳しくご紹介します。

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研磨加工とは

研磨加工とは、砥粒(とりゅう)と呼ばれる硬度が高く微細な粒を同時に作用させて、材料の表面を少量ずつ削り、滑らかな状態へ加工する技術です。砥粒の材料には、ダイヤモンドが使用されることもあります。
マイクロメートル(μm・ミクロン)単位での調整が可能であるため、精度や強度が求められる製品に用いられます。また、表面の凹凸を少なくし、光沢のある状態へ仕上げることができるため、外観・美観の向上、サビや汚れの付着防止などあらゆる目的で研磨加工が施されます。

研磨加工と研削加工の違い

ともに砥粒が作用し、材料の表面を削って除去する加工ですが、「研磨」に「研削」の意味を含む場合があります。「研磨」には、表面を削り落とす「研削作用」と、表面を磨きつや出しを行う「琢磨作用」の両者の意味を持ちますが、狭義においては削り落とすことを「研削加工」、仕上げ工程として磨いてつや出しをすることを「研磨加工」として区別する場合もあります。

研削加工のイメージ画像
研削加工の様子

そのほかの機械加工については、こちら 「機械加工の基礎知識|加工方法や工作機械の種類を解説」 でご紹介しています。
 

研磨加工の種類

ここでは、研磨加工の主な種類をご紹介します。

砥石研磨

砥石研磨とは、砥石(といし)を高速回転させて、加工物に当てることで表面を削って磨く研磨方法です。砥石は一つ一つ刃として作用する小さな粒の砥粒と結合剤によって形作られています。そしてその中には気孔が存在し、切り屑の排出や冷却を手助けします。
高速回転する砥石の表面では、刃として働く砥粒が加工物を削りながら損耗・脱落し、その下の砥粒がまた表面に出てくることで、継続した研削を行います。

ラッピング研磨

ラッピング研磨とは、ラップと呼ばれる平面台の上に加工物を置き、上から力を加え、研磨剤に含まれる砥粒と加工物を擦り合わせる研磨方法です。液体研磨剤を流し入れる湿式法と、ラップ台表面に砥粒が埋め込まれている乾式法があります。砥粒が固定されている砥石とは異なり、砥粒が転がりながら削っていくため、平滑化効果が高くきれいな仕上げ面を得ることができます。ただし、研削速度が遅いため、仕上げ加工には適していますが、厚みを落としたい場合は、砥石研磨を用いるなど使い分けが必要です。

バフ研磨

バフ研磨とは、綿やフェルトなどの柔らかい素材で作られた「バフ」に研磨剤を付けて、回転させながら加工物に当てることで表面を磨く研磨方法です。グラインダーやポリッシャーと呼ばれる手持ちの回転研磨盤を用いることもあり、「つや出し」や「鏡面仕上げ」など仕上げ工程で使われることが多いです。指定された表面粗さにするために、バフの素材や研磨剤の種類を使い分けます。

バレル研磨

バレル研磨とは、大型の機械に加工物と研磨石、洗浄作用や潤滑作用をもつコンパウンドと呼ばれる研磨剤と水を入れ、機械を回転させたり振動させたりして、混ぜ合わせることで加工物の表面を削って磨く研磨方法です。一度に大量に加工ができますが、主にバリ取りを目的に用いられる方法です。

電解研磨

電解研磨は他の研磨方法とは違い、砥粒を使用しない研磨方法となっており、その加工方法は加工物を電解液に浸し、電流を流して電気分解させることで加工物の表面をなめらかにしていきます。
より精度の高い平面を出すことができ、また他の研磨方法では狭くて加工が困難な部分も研磨することができるといった特徴を持ちます。
このようにメリットが多い電解研磨ですが、デメリットとしては一部の金属にしか適用されないといった制限や、コストが高い傾向にあることが挙げられるでしょう。

ステンレス/SUS303/フライス加工・マシニング加工/平面研磨仕上げ
エージェンシーアシスト加工実績 平面研磨(ステンレス/SUS303/フライス加工・マシニング加工)
 

研磨加工の手順

1.下地

まず、目の粗い砥石を用いて、加工物の表面の大きな凹凸や異物を取り除きます。
砥石には番手が存在し、砥粒の大きさ(粒度)によって数字が振られています。数字が小さいほど砥粒が大きく、目が粗いため削りも大きくなります。

2.ならし

下地工程で使用した砥石よりも目が細かい砥石を使用し、下地工程で凹凸や異物を取り除いた表面をさらに「ならし」ていきます。

3.つや出し

下地、ならし工程で平らにした表面に光沢を出すための工程です。さらに目の細かい砥石を使用し、つやが出るように表面を削りながら磨いていきます。また、このあとに行う鏡面仕上げの前処理段階として必要な工程になります。

4.鏡面仕上げ

文字通り、鏡のような光沢を出す仕上げ工程です。砥石の番手を大きくし、より目の細かい砥石で丁寧に研磨したり、布などの柔らかい素材に研磨剤を付けて少しずつ研磨するバフ仕上げなどを行います。

砥石による研磨加工で水を使用するのはなぜ?

金属の切削加工では、加工部分に切削油などを噴射することで、発熱による刃物の摩耗を防いだり、切り屑の排出を手助けしたりします。
しかし、砥石を使用する研磨加工では、一般的に研削液として水を使用します。
理由は、金属を削り出す切削工具に比べて、砥石の回転速度が低いため、水で冷却作用が十分得られることや、洗浄作用潤滑作用を兼ねることができるからです。
また砥石は、切れ味を保つために砥粒が脱落するよう適度に損耗させる必要があるうえ、油にしてしまうと砥石の内部に入り込み、研磨機能に影響がでる可能性があるため、水を使用するのが一般的です。
ただし、鏡面仕上げ工程に入ると、光沢を出すために白棒・青棒と呼ばれる固形油性研磨剤を使用して磨きます。

ステンレス/SUS303/旋盤加工/円筒研磨
エージェンシーアシスト加工実績 円筒研磨(ステンレス/SUS303/旋盤加工)
 

砥粒の種類

砥粒の種類
研磨加工で用いられる砥粒は、硬さや粘り強さ、破砕性などを考慮して選定されます。
一般的に硬さと粘り強さは相反するため、どちらを優先するべきか目的ごとに考える必要があると言えます。
使用される砥粒には様々な種類がありますので、こちらではその一例をご紹介します。

ダイヤモンド

物質の中で最も高い硬度を持つダイヤモンドは、宝飾品だけではなく、砥粒として用いられることもあります。
ダイヤモンドは高い硬度を持ちますが、鉄などを研磨する際には接触面が高温となり、化学反応を起こして硬度が下がってしまうため、不向きであると言えます。
そのため、加工時に熱を持たないよう速度を遅くしたり、コンクリートやガラスといった素材の加工時に採用されたりします。

アルミナ

酸化アルミニウムとも呼ばれており、比較的安価であることから、最も広い範囲でよく使用されている砥粒です。
安価ですが、硬度の高い加工物に対しても十分に研磨が可能です。

炭化ケイ素

砥粒の種類の中でも一般的なものであり、価格も安く、砥粒の大きさも種類が多いため、広く使用されています。
金属の研磨に使用されることが多く、ガラスや超硬合金には不向きですが、緑色炭化ケイ素は超硬合金にも適しています。

CBN(立方晶窒化ホウ素)

人工的に作られた物質であり、炭素、ホウ素、窒素の化合物であることから、それぞれの頭文字を取ってCBNと呼ばれています。
ダイヤモンドよりも少しコストは高いですが、ダイヤモンドに次ぐ硬度を持ち、高温への耐性もあることから、超硬合金などの研磨に使用されます。
 

研磨加工と表面粗さの関係

表面粗さは、加工後の表面に生じる凹凸を表したもので、精密な加工が求められる加工物では重要な指標になることも多いです。
表面粗さが大きい場合は表面がざらざらとし、小さければ表面がつるつるとした触り心地になり、また表面粗さが低くなるにつれて光の反射も鏡のように反射していきます。
この表面粗さは加工物の目的によって異なると言えます。
精密な加工が求められる基盤や製品の表面に出てくるものであれば、表面粗さを小さくすることもありますが、機械のベースや表面に出てくるものでも塗装で仕上げる場合には、表面粗さは大きくても問題はありません。
 

まとめ

今回の記事では、研磨加工について詳しくご紹介しました。

表面粗さの指標は2001年に算術平均粗さ(Ra)がJIS規格で定められましたが、業界では今でも多くの図面で三角記号(▽▽▽)が使用されています。この三角記号の上にGを記載することで研磨加工指示を出すことができます。

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