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公開日: 2025.06.30
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ステンレスの加工は難しい?加工しやすい素材やポイントを解説

ステンレス加工

ステンレスは錆びにくく丈夫な金属であり、家庭用品から産業用部品まで幅広く使われています。一方で、頑丈なことに加え、素材自体が加工中に硬くなったり、熱が逃げにくかったりする特性を持つため、加工難易度が高いのもステンレスの特徴です。

ただし、すべてのステンレスが同じように加工しにくいわけではありません。種類ごとの特性を理解し、ポイントを押さえて適切な工具や方法を選べば、難易度を大きく下げることが可能です。

この記事では、ステンレス加工が難しい理由や、加工しやすい素材の種類、加工時に注意すべきポイントを解説します。

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ステンレスとは

ステンレスは、見た目が鉄に近く、ほとんど錆が発生しない素材です。ステンレスという名称は「錆(ステン)が発生しにくい(レス)」ことを指しています。

ステンレスは、主成分である鉄が50%以上、クロムが10.5%以上含まれる合金です。酸化しやすい素材である鉄にクロムを混ぜることで、錆びにくさを実現しています。ステンレスは金属材の中では高価な時期もありましたが、技術革新によって生産性が向上してコストが下がり、加工素材に採用しやすくなりました。現在では食器類や刃物といったステンレス製の商品が普及し、一般の消費者にとっても身近な素材となっています。

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ステンレスの加工が難しいとされる理由

ステンレスは優れた特性を持っており、さまざまな製品に使われている一方で、加工が難しいと言われることも多い素材です。そのため、ステンレスの加工技術やノウハウを持たない個人などは、専門の加工業者にオーダーするケースも少なくありません。

以下では、ステンレスの加工が難しいとされる要因について解説します。

ステンレスの種類により特性が異なる

一口にステンレスと言っても、添加する物質によって種類は多岐にわたります。以下の一覧表は、ステンレスの主な種類と、それぞれの特性の違いを表したものです。

材料名 硬度(HV) 耐力(N/mm2) 引張強さ(N/mm2) 伸縮性(%) 比重(g/cm2)
SUS301 220 205以上 520 40 7.93
SUS304 200 205以上 520 40 7.93
SUS304L 200 175以上 480 40 7.93
SUS310S 200 205以上 520 40 7.98
SUS316 200 205以上 520 40 7.98
SUS316L 200 175以上 480 40 7.98
SUS430 200 205以上 450 22 7.70

例えば、「引張強さ」が高いステンレスは破断するまでに必要な力が少ないため、より加工が難しくなります。

また、ステンレスは金属組織によって「Cr系」と「Cr-Ni系」に分けられます。Cr系に分類されるマルテンサイト系ステンレスは急冷されることで針のような組織が生まれ、硬度が高くなる反面、加工が難しいのがデメリットです。一方、Cr-Ni系に分類されるオーステナイト系ステンレスは鉄原子が詰まった状態であり、比較的柔らかく加工しやすいという特徴があります。

ステンレスは種類が多く、細かな特性はそれぞれ異なります。そのため、ステンレスのタイプごとの特性を理解し、最適な機械を用いて加工することが重要です。

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応力がかかると硬くなる特性を持つ

ステンレスには、一定の応力がかかると硬くなる特性があります。応力とは、物体が外側から力を受けたときに物体内部に発生する力のことです。「変形に抵抗する力」とも言うべき特性であり、「加工硬化」とも呼ばれます。
加工中にステンレスの硬度が高まると、加工を行いにくくなるほか、極端に強い力がかかれば元の状態に戻すことも難しくなります。ステンレスは多様性に富んでおり、加工硬化の有無や程度が種類によって異なる点が、加工が難しいと言われている一因です。

加工時に熱が逃げにくい

旋盤加工
ステンレスは熱伝導率が悪く、加工時に発生した熱が非切削物や切りカスに逃げにくいという特性があります。切削熱が工具の刃の先端部分に集中した結果、チップが欠損するなどの問題が生じるケースは少なくありません。また、工具の摩擦によって切削抵抗が大きくなると、さらに加工熱が発生する悪循環に陥ります。すると、工具の破損だけではなくステンレスのゆがみも引き起こしやすくなるので注意しましょう。工具の破損リスクを抑えるためには、適切な工具を選ぶことが重要になります。また、ドリルのステップ回数を最小限に抑えるなどの工夫も必要です。

ステンレスが割れる恐れがある

ステンレスは溶接できる素材ではあるものの、熱を加えた後に急激に冷えることで、製品が割れる危険性があります。また、溶接時の熱によって「溶接焼け」が発生するケースもあるため注意が必要です。ステンレスに割れや溶接焼けが発生すると、見た目が悪くなるだけではなく、電食などのトラブルにつながる恐れもあります。ステンレスの割れを防ぐためには、種類ごとの特性を理解し、適切な熱処理の方法を知っておくことが大切です。また、加工にあたっては潤滑油を多めに使うことで熱を逃がしやすくなります。

金属くずの付着により工具の状態が悪くなる

金属加工の切子
ステンレスは工具との親和性が高く、切削加工の際などには金属くずが工具に付着しやすいという特性があります。工具に金属くずが付着すると、くずが剥がれるときに工具の一部も一緒に剥がれてしまい、工具の寿命を縮めることにもつながります。また、工具に金属くずが溶着し、加工精度が落ちるケースもあるため注意が必要です。
ステンレスを加工する際には、工具の素材や加工方法を見直した上で、金属くずの管理や工具のメンテナンスをしっかりと行うことが重要になります。

 

加工しやすいステンレス素材はある?

ステンレスの種類によっては、特定の加工がしやすいものもあります。SUS304は、ステンレスの中では比較的溶接しやすい素材です。ステンレスの中では最も多く流通しており、低コストでさまざまなサイズの材料を入手できるというメリットもあります。ただし、SUS304は粘りが強く加工硬化を起こしやすいため、切削加工が難しい点に注意しましょう。

切削加工をする場合はSUS303を選ぶのがおすすめです。SUS303はSUS304に硫黄を添加し、削りやすく改良したステンレスです。材料費は少し高くなるものの、切削加工に関するコストは削減できます。細くて深い穴や深い溝など、難しい形状の加工をする場合はSUS304ではなくSUS303を選ぶとよいでしょう。

 

ステンレス加工をするときのポイント

ステンレスにはさまざまな加工方法があり、それぞれの注意点を押さえないと欠陥につながる恐れがあります。以下では、ステンレス加工をするときのポイントについて加工方法ごとに紹介するので、参考にしてください。

ステンレスの切断加工のポイント

ステンレスの切断に使う工具は、金属加工用のパイプカッターやディスクグラインダーのうち、ステンレス加工に対応しているものを使用しましょう。また、ステンレスの切断加工では、工具が熱の影響で摩耗・破損する可能性があります。そのため、他の金属を加工するときと比べてパワーを下げた状態で加工するなど、熱を逃がしながら作業できるように工夫することが大切です。

また、ステンレスの切断加工をすると、切断面に「バリ」と呼ばれる出っ張りやギザギザが発生します。バリが残った状態だと皮膚に引っかかって怪我をする可能性があるため、切断加工後には必ずバリ取りをしてください。加工したステンレスが小さければやすりで削ってバリ取りをすることも可能ですが、切断面が大きい場合はグラインダーなどを用いてバリ取りを行うのがおすすめです。

ステンレスの穴開け加工のポイント

ステンレスに穴開け加工を行うと、熱がこもって工具が摩耗する原因になります。ステンレスに穴開け加工を行う際には、ほかの金属を加工するときよりもドリルの回転数を落として作業するとよいでしょう。ドリルの回転数を落とすと作業時間は長くなるものの、工具や材料への負担は低減できます。

また、ステンレスの穴開け加工の際には、切削油を使用すれば熱を多少下げることが可能です。切削油を使うと、ステンレスの金属くずが工具に付着するのを防げるというメリットもあります。

ステンレスの穴開け加工の際にも、切断加工と同じくバリが発生します。あらかじめバリが発生しにくい加工方法を選ぶという手もありますが、基本的にはバリ取りを行うことを前提に作業を進めましょう。

ステンレスの曲げ加工のポイント

曲げ加工

ステンレスの曲げ加工には、プレス曲げ、ロール曲げ、ベンダーを用いた曲げなどの種類があります。ステンレスの特性に合った曲げ加工の種類や設定が必要になるため、曲げ加工には専門的な知識や技術が必要です。

また、ステンレスはほかの金属に比べてスプリングバックが大きいという特性があります。スプリングバックとは、曲げ加工を行った後、材料が弾性により元の形状に若干戻る現象のことです。ステンレスに曲げ加工をする際には、スプリングバックを見込んだ角度の設定をする必要があります。

 

まとめに

ステンレスは素材の特性から加工難易度が高いものの、ステンレスの種類ごとの特徴を理解し、加工方法を適切に選べば十分加工の対応が可能です。中でも切削加工にはSUS303、溶接加工にはSUS304が向いています。

また、切断加工や穴開け加工の際には、熱を持った切りくずが加工機に張り付いて機会を破損させないように、パワーを落として作業しましょう。加えて、どうしてもバリが生まれるため、バリ取りを前提とした作業工程を組むのも大切です。

ステンレスの頑丈さや加工硬化の特性は、曲げ加工の際にスプリングバックが想定より大きくなる要素でもあります。ステンレスの種類によってもスプリングバック量は違うため、あらかじめスプリングバック量を計算した上で加工を施しましょう。

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