製造業界で最近よく耳にする、「けむしぇるぱ」というワード。
調べてみると何やら「製品含有化学物質の情報伝達共通スキーム」とのこと。
なるほど・・・・・・・・、まずスキームってなに・・・・・・・・?
そんな私(ビジネス用語に疎い中の人)が、chemSHERPAについてイチから調べ、簡単にまとめてみました。
本コラムは私みたいな初心者の方向けに要点を抜粋・分かりやすさ重視でまとめていますので、より詳しい内容や取り組み手順、ツール操作についてはchemSHERPAの公式ホームページ(https://chemsherpa.net/)を見てくださいね!
chemSHERPA(読み方:ケムシェルパ)とは、製品に含まれる化学物質の情報を川上企業から川下企業までサプライチェーン全体で適正に管理し、確実かつ効率的に伝達するために、経済産業省主導で2015年に開発・リリースされた情報伝達共通スキーム(またデータ作成支援ツール)を指します。
現在は、JAMP(アーティクルマネジメント推進協議会)が運用しており、関連する法規則の改訂などと併せて定期的な見直し・バージョンアップが行われます。
chemSHERPAという言葉は「chemical information SHaring and Exchange under Reporting PArtnership in supply chain (サプライチェーンにおける、報告パートナーシップ下での化学情報の共有と交換)」 の頭文字を取った造語です。
chemSHERPAが運用される以前、欧州や米国、アジア諸国など世界各地で製品含有化学物質に関する規制が導入・強化されていました。日本国内では、大手企業が用いる情報伝達スキーム(JAMP、旧JGPSSI、IMDSなど)のほか、企業独自のフォーマットも多く存在し、サプライチェーンの間にいる中小企業は、それぞれ異なるスキームに対応しなければならず、負担となっていました。そこで、経済産業省(国)が中心となって、統一フォーマットである情報伝達共通スキームを提供することになりました。
英語の「scheme」に由来する用語で「計画・設計」や「図解」という意味のほか、日本のビジネス用語として「目標達成に向けた具体的な計画や枠組み」といった意味で使われます。
似たような単語で「プラン」や「フレームワーク」などもありますが、「スキーム」には継続的な意味合いが含まれています。
ちなみに、本来の英語「scheme」の意味は「悪巧み」や「陰謀」というネガティブな意味合いを持つため海外では安易に使用しない方が良いとされています。
chemSHERPA利用ルール 序文には以下の通り記されています。
「chemSHERPAの情報伝達スキームは、人の健康と環境の保護を促進するために、製品の生産及び使用に必要な製品含有化学物質情報をサプライチェーン全体で共通化し、確実かつ効率的な情報伝達の推進を目的としている。」
一つの製品を販売するために一つの会社が、素材から材料の生産、加工、組み付けまで全てを行うことはほとんど無いかと思います。
一般的には川上企業から川中企業、川下企業へと流通が行われ、複数の企業(国)が関わることで製品が完成し、顧客のもとへ届けられます。
そのような状況において、世界各国の環境法規制への対応、人の健康と環境の保護を促進していくためにも、企業は製品に含まれる化学物質の情報を適切に管理し、「責任ある情報伝達」を行う必要があります。
スーパーには多くの食材がありますが、ほとんどのモノに生産者や含有食品添加物の情報が記載されており、それが当たり前になっています。
工業製品そのものだけに限らず、部品一個の世界においても、食料品と同じレベルの情報開示が当たり前の世の中になってきつつあるということですね。
サプライチェーン全体の情報伝達が共通化できるよう、chemSHERPAには情報伝達の対象範囲となる「管理対象物質」、製品含有化学物質情報として伝達すべき「情報項目」、情報伝達のための「データフォーマット」等を定めた利用ルールが存在し、情報伝達を行うすべての組織が遵守しなければいけません。
情報伝達の対象とする化学物質。管理対象基準(法規制・業界基準)によって規定される。
※管理対象基準によって規定、管理対象とされているため、製品に含まれている物質すべてを伝えるわけではありません。
製品含有化学物質情報を電子データ化するためのフォーマット。
※国際的な普及を考え、電気電子機器製品に関する含有化学物質の情報伝達についての国際規格IEC62474のXMLスキーマが採用されています。
chemSHERPAを利用する組織は、ルールを正しく理解し、企業間で逸脱する要求をすることがないようにしなければなりません。
なお、chemSHERPAの定義書である「利用ルール」は将来的な国際規格化を見据えISO9001/14001の定義書とほぼ同じ構成で作られています。
詳しいルールに関してはchemSHERPAの公式HP(https://chemsherpa.net/)をご確認ください。
chemSHERPAのデータ作成支援ツールには種類が2つあります。
「化学品」または「混合物」を対象としたデータ作成支援ツール
「成形品」を対象としたデータ作成支援ツール
データ作成支援ツールのフォーマットは変更せずに使用し、情報の記述については英語を用いるよう定められています。(国外企業との情報伝達でも使用できるよう、chemSHERPAのデータ作成支援ツールは日英中の言語に対応しています。)
※データの拡張子が化学品は.shci、成形品は.shai と異なります。また、対象のデータ作成支援ツール上でしか開くことができないため、適当なプログラムをインストールする必要があります。
化学物質が化学反応などを通して成形品へ変わる工程(変換工程:揮発、硬化、析出、溶融など)がある場合、製品含有化学物質情報の適切な管理が重要となります。
chemSHERPAにおける主な用語の定義は以下の通りです。
用語 | 定義 |
---|---|
製品含有化学物質 | 製品に含有されていることが把握される化学物質 |
化学物質 | 天然に存在するか、又は任意の製造過程において得られる元素及びその化合物 |
混合物 | 2つ以上の化学物質が混合したもの <注記>混合物の例として、塗料、インキ、合金のインゴット(2種類以上の金属を融合させて溶かし固めたもの)、はんだ、樹脂ペレット等がある。 |
化学品 | 化学物質 及び/又は 混合物 |
成形品 | 製造中に与えられた特定の形状、外見又はデザインが、その化学組成の果たす機能よりも、最終使用の機能を大きく決定づけているもの <注記>成形品の例として、金属の板材、歯車、集積回路、電気製品、輸送機械等がある。※回路上のはんだは成形品にあたります。 |
部品 | 完成品に至るまでの成形品 |
完成品 | 化学品 及び/又は 部品を組み合わせたり、加工したりして製造した最終の成形品 |
製品 | 組織が、その活動の結果として、顧客に引き渡す化学品、部品、及び完成品 |
成分 | 化学品が構成する要素 <注記>“要素”とは、化学品を構成する化学物質、又は単一化学物質の同定が難しい場合は起原もしくは製法によって特定できるもの。 |
chemSHERPAについてまとめてみましたが、まだまだ、ほんの一部です。
(何度も言いますが、詳しい内容はchemSHERPA公式HPをご覧くださいね。)
chemSHERPAに取り組むことで、企業にとっては化学物質に関するリスク管理ができると共に、企業の信頼性を向上させることができます。
ただし、非常に複雑かつ正確な情報管理が重要になってきます。また、今後法規則等が変更された場合は随時変化に対応し、継続的に取り組んでいく必要があります。
そして根本として、chemSHERPAの本来の目的を果たすためには、1社だけが取り組んでも意味がなく、川上~川下企業までサプライチェーン全体が運用しなければいけないのだと、わたくし中の人も深く理解することができました・・・!
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