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公開日: 2025.08.08
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MCナイロンとは?グレードごとの特徴と用途・加工方法を解説

MCナイロンとは?

ナイロンは、衣類や雑貨、食品用のフィルムなど、人々の身近な製品に幅広く使用されているポピュラーな樹脂です。そして、このナイロンの総合的な性能を向上させた特別な樹脂が「MCナイロン」です。

一般的なナイロンとは異なる製法でつくられるMCナイロンは、高い強度や耐摩耗性を備えており、金属部品の代替材料としても活用されています。また、MCナイロンにはいくつかのグレードがあり、用途に合わせて使い分けられることも特徴です。

そこで今回は、MCナイロンの概要からグレードごとの特徴と用途、さらに加工方法まで詳しく解説します。

 

MCナイロンとは?

MCナイロン(モノマーキャストナイロン)とは、ポリアミド樹脂の一種で、「モノマー」を原料として金型に注入し、重合・成型するという「キャスト法」によって製造される特殊なナイロンです。射出成形品や押出成形品にはない優れた特徴をもっており、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)としても知られています。

MCナイロン(モノマーキャストナイロン)

そもそもモノマーとは、プラスチック(ポリマー)を構成する単位分子であり、これらを化学的に結合させることによって重合し、プラスチックが形成されます。そしてキャスト法とは、液状の原料を金型内に流し込み、その場で重合させて形成する製法のことです。

MCナイロンと同じくポリアミド樹脂の一種で、日本国内で最も多く製造されている樹脂に「6ナイロン」があります。MCナイロンの基本的な分子構造は6ナイロンと同様ですが、製造工程の違いによって6ナイロンの弱点を改善し、総合的な性能を向上させていることが特徴です。

こちらもチェック!樹脂切削加工とは?特徴や樹脂素材についてご紹介

 

MCナイロンのグレードごとの特徴と用途

MCナイロンは、6ナイロンを含む一般的なナイロンと比べて機械的強度・耐摩耗性・耐薬品性・耐熱性に優れており、さまざまな用途に活用できるという利点があります。その一方で、吸水性・吸湿性が高く寸法が変化しやすい点や、酸に弱い点が難点と言えます。

また、MCナイロンは添加剤を配合することで耐候性や潤滑性などを強化することが可能です。特性を強化したMCナイロンはさまざまなグレードに分類され、用途に応じて使い分けられています。

ここからは、MCナイロンの代表的なグレードごとの特徴と使用用途について詳しく紹介します。

 

グレード 特徴・用途・色
通常グレード 特徴:機械的特性のバランスが良く、汎用性が高い
用途:歯車、ライナー、車輪など工業機械部品
色:MC901=青、MC900NC=白/ナチュラル
耐候グレード 概要:グラファイト添加により、紫外線・摩耗に強い
用途:屋外の建機、農業機械、レジャー用品など
色:黒灰
摺動グレード 概要:潤滑剤配合で、すべり性・耐摩耗性が高い
用途:ガイドレール、軸受、搬送部品など
色:紫
高強度・耐熱グレード 概要:通常グレードよりも強度・耐熱性が高く、連続150℃使用可
用途:高温環境でのギヤやローラーなど
色:茶色
導電グレード 概要:カーボン系充填で導電性を付与し、静電気対策用に使用可
用途:半導体・電子機器の製造現場など
色:黒
帯電防止グレード 概要:帯電防止性を持つが、完全導電ではない
用途:製造ラインのローラー、パレット、治具など
色:黒
帯電防止・耐熱グレード 概要:帯電防止+高耐熱(高温下で安定)
用途:クリーンルーム内の電子・搬送部品など
色:黒

 

通常グレード

MCナイロンにおける通常グレードとは、各グレードの基盤となる汎用性の高いグレードで、「基本グレード」や「一般グレード」とも呼ばれています。機械的特性がバランスよく優れており、幅広い分野で汎用的に活用できる材料です。

通常グレードの代表的な製品には「MC901」や「MC900NC」などがあり、特に工業機械部品や歯車、耐摩耗用品などの工業用途において重宝されています。

また、MCナイロンは製品ごとに異なる色で着色されており、メーカー側はこの着色された色を基準に各製品やグレードを色分けしていることが特徴です。

メーカーによって若干の違いはありますが、一般的にMC901は「青色」、MC900NCは「白色」や「ナチュラル」、「アイボリー」といった色分けがされます。流通数が多いのは青色のMC901ですが、いずれも通常グレードで色以外の機械的性質の差はほとんどありません。

 

耐候グレード

耐候グレードとは、通常グレードのMCナイロンに特殊なグラファイトを添加し、耐候性や耐摩耗性、すべり性能を向上させたグレードです。

耐候グレードに該当するMCナイロンの代表的な型番は、「MC801」となります。濃灰色に着色されていることが特徴で、一般的に「黒灰色」として色分けされています。

MC801は、主に紫外線に対する耐候性に優れていることから、屋外で使用する建機や農業・工業用機械部品、スポーツ・レジャー用品など幅広い用途で用いられます。

 

摺動グレード

摺動グレードとは、通常グレードのMCナイロンに特別な潤滑剤を加えることで、摺動性と耐摩耗性を大幅に向上させたグレードです。摺動グレードに該当するMCナイロンの代表的な型番には、「MC703HL」が挙げられます。「紫色」として色分けされていることが一般的です。

MC703HLは、他グレードのMCナイロンと比較してすべり性能が非常に優れており、摩擦が高い条件下での使用に最適です。また、振動や騒音を低減する特性があることから、自動車部品や一般機械部品の長寿命化にも寄与します。主な用途としては、「ガイドレール」や「軸受け」、さらに「搬送機械等の各種部品」などが挙げられます。

 

高強度・耐熱グレード

高強度・耐熱グレードとは、通常グレードのMCナイロンよりもさらに機械的強度と耐衝撃性、耐熱性を強化させたグレードです。高強度・耐熱グレードに該当するMCナイロンの代表的な型番は「MC602ST」であり、一般的に「茶色」として色分けされます。

通常グレードの「MC901」の連続使用温度は120℃程度であるのに対して、MC602STの連続使用温度は150℃程度と、特に高温下での使用に強い点が特徴です。そのため、一般産業機械や搬送機械などの高温環境で動作する部品、車輪・ローラー・ギヤ・治具など幅広い用途で用いられています。

 

導電グレード

導電グレードとは、通常グレードのMCナイロンにカーボン系充填剤を添加し、導電性を付加させた特殊なグレードです。導電グレードに該当するMCナイロンの代表的な型番は「MC501CDR2」であり、一般的に「黒色」として色分けされます。

導電グレードは静電気の蓄積を防止できる優れた導電性をもち、電子部品の製造・組み立てラインにおける安全維持に大きく貢献できます。特に、静電気による損傷が懸念される半導体や電子機器などの精密部品に多く用いられます。

 

帯電防止グレード

帯電防止グレードも導電グレードと同様に、静電気の蓄積防止を目的とした特殊なグレードです。しかし、導電グレードとは違って、一定の帯電防止性をもちながらも完全な導電性はもたないことが特徴です。帯電防止グレードに該当するMCナイロンの代表的な型番は「MC501CDR6」で、導電グレードと同じく「黒色」として色分けされています。

帯電防止グレードは、静電気の蓄積を防ぐことが重要な場面のほか、完全な導電性を必要としない用途にも適しており、特に自動車製造ラインや電子機器の組み立てプロセスでは重要な役割を果たします。

具体的には、コンベアベルトやローラーなどの摩擦動作が伴う部分や、電子部品製造装置のパレット、ハンドリング冶具、溶剤を使用する箇所の部品によく使用されます。

 

帯電防止・耐熱グレード

帯電防止・耐熱グレードとは、帯電防止性と耐熱性を兼ね揃えた特殊なグレードです。帯電防止・耐熱グレードに該当するMCナイロンの代表的な型番は「MC501CDR9」で、色分けは導電グレード・帯電防止グレードと同様に「黒色」となります。

帯電防止グレード・耐熱グレードの最大の特徴は、優れた耐熱性にあります。高温下での性能劣化が少なく、長時間にわたって安定した機械的強度や帯電防止性を維持することが可能です。したがって、特に高温環境で使用される電子部品や搬送機器、クリーンルーム内で使用される各種機器の部品として幅広く用いられています。

 

MCナイロンの加工方法

MCナイロンの特性をしっかりと生かすためには、適切な方法で加工することが重要です。MCナイロンの加工方法には、「マシニング加工」と「旋盤加工」の2つがあり、それぞれ異なる特徴をもっています。

ここからは、MCナイロンの2つの加工方法について詳しく紹介します。

 

マシニング加工

マシニング加工とは、工作機械を使用して、板やブロック状に形成された樹脂材料を切削加工するという加工方法です。ドリルやエンドミルなどの工具を使用して、穴あけや削り加工を行い、複雑な形状に仕上げられます。

マシニング加工

また、「マシニングセンタ」と呼ばれる工作機械には、自動工具交換装置(ATC)が装備されています。一連の加工作業に必要な切削工具を事前にセットすれば、プログラムに応じて工具が自動で交換されるため、効率的な生産が可能となります。

 

旋盤加工

旋盤加工とは、NC旋盤や汎用旋盤を使用して材料を回転させながら、固定した切削工具を当てて形を削り出す加工方法です。

旋盤加工

材料として使用されるのは、主に丸棒となります。回転させながら加工を行うため、製品は基本的に左右対称の形状になることが特徴です。

ボルトや軸受け、コネクタといった円形や円筒形の部品加工に適した方法と言えるでしょう。

樹脂やプラスチックの切削加工を行う株式会社エージェンシーアシストでは、MCナイロンを使った加工部品の製作にも対応しています。加工事例をご覧になりたい方は、ぜひこちらもあわせてご確認ください。
 

 

まとめ

MCナイロンとは、金型にモノマーを原料として注入し、重合・成型するキャスト法で製造される特殊なナイロンです。国内で最も多く製造されている6ナイロンと同様にポリアミド樹脂の一種ですが、一般的なナイロンと比べて総合的な性能が優れている点が特徴となっています。

MCナイロンの使用場面

MCナイロンは、各シーンで最適な性能を発揮するために多様なグレードが展開されており、用途に応じてそれぞれ使い分けられています。MCナイロンの使用場面に合わせて、適切なグレードと加工方法を選ぶことをおすすめします。

 

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