機械加工の見積もりを依頼する際に「機械加工チャージ」という言葉をよく目にする方もいるでしょう。
当記事では、機械加工チャージの定義や加工費との関係、相場の目安、費用に影響する要因について解説します。さらに、加工コストをできるだけ抑えるためのポイントや、見積もりを取る際の注意点についても詳しく取り上げます。機械加工の費用構造を理解し、適切な業者選定を行うために当記事をぜひ参考にしてください。
機械加工チャージとは、工作機械などを用いて材料・部品を加工するときにかかる、1時間あたりの加工賃のことです。製造原価を計算するときに使用される指標であり、顧客に提示する機械加工の見積もりや、作業後の案件評価にも使われています。
機械加工チャージと、作業完了に必要な作業量を表す「加工工数」を用いることにより、機械加工の加工費を算出可能です。
機械加工における加工費の計算式
機械加工の加工費=機械加工チャージ×加工工数
機械加工にかかる費用は、基本的に「材料費」「加工費」「特殊加工費」の3つで構成されています。
・材料費
材料費とは、加工対象の材料そのものにかかる費用です。鉄鋼やステンレス、マグネシウムなどの材料があり、材料費はキロ単価で価格が表されます。なお、大量に使用する場合はまとめて調達することで調達コストが抑えられ、キログラム単価あたりの材料費も安くなります。
・加工費
加工費とは、材料に機械加工を施す際にかかる費用です。加工賃とも呼ばれ、機械加工チャージと加工工数を掛け合わせることで算出します。機械加工チャージと加工工数はさまざまな要因による影響を受けやすいため、加工費は加工業者によって差が表れる金額です。
・特殊加工費
特殊加工費とは、材料に対してメッキ・塗装・研磨加工などの加工処理をしたり、性質向上を目的とした熱処理を施したりする場合にかかる費用です。特殊加工費は業者による金額差は大きくないものの、依頼したい加工に対応していない場合は別途外注費がかかるケースがあります。
機械加工チャージの相場は4,000円前後です。
しかし、実際の機械加工チャージの金額は機械設備のイニシャルコストや稼働にかかるランニングコスト、加工方法などによる差があります。例として、5軸加工機による加工作業は作業者に高い技術が必要であり、費用相場は9,000円程度になると言われています。
機械加工チャージの金額が相場通りとは限らないため、見積もりを取るときは都度確認が必要です。
機械加工チャージの相場は設備や加工方法の他にも、さまざまな要素から影響を受けます。機械加工チャージの相場に影響を与える具体的な要因は、下記の3つです。
・業界による差
製造業には金属加工業界・自動車製造業界・精密機器製造業界などいくつもの業界があります。業界によって求める加工精度や導入する設備に違いがあることが、相場に差が出る理由です。例として、自動車製造業では生産ラインの自動化が進んでいて、効率的に機械加工を行えます。一方、金属加工業は機械加工と手作業を組み合わせる職場が多く、機械加工チャージが高くなる傾向があります。
・企業規模による差
大企業と中小企業という企業規模による差も、機械加工チャージの相場の差につながります。
大企業は材料調達時のスケールメリットを得られ、加工案件の安定受注により工作機械の稼働率も高いため、機械加工チャージを安く設定しても利益を得られます。設備投資に使える金額も大きく、作業効率の高い工作機械を利用できることも強みです。一方、中小企業はスケールメリットや設備投資による恩恵を受けにくく、機械加工チャージも大企業よりも高くなるケースがあります。
・地域による差
機械加工チャージの相場は、地域による差の影響も受けます。都市部は人件費が高くなりやすい反面、地方は人件費が安いなど、機械加工に従事する作業者の労務費に金額差が出るためです。また、物流コストの違いが機械加工チャージに影響を与えるケースもあります。
見積もりの計算方法は業者によって異なるため、機械加工チャージの金額も業者ごとに差が出ます。機械加工の見積もりは、相場に影響する要因も含めて判断するとよいでしょう。
機械加工の費用をできるだけ抑えるには、機械加工チャージの他にもかかる各費用を見直す必要があります。
以下では、機械加工を依頼する前に見直すべき3つのポイントを解説します。
機械加工を依頼するときに発生する初期費用には、一般的に加工図面の作成費用が含まれています。
加工図面とは、材料の加工にかかわる情報を記載した図面です。加工業者側に加工図面の作成を合わせて依頼すると、機械加工の初期費用が高くなる原因となります。
社内で2DCAD・3DCADなどを用いて図面作成ができる場合は、加工図面の作成を自社で行うとよいでしょう。加工図面の作成費用が発生しなくなり、初期費用を安く抑えられます。
また、シンプルな図面にすると加工工程や切削量が減り、加工費用の削減にもつながります。
材料費は素材ごとに単価が決まっているため加工業者による差がほとんどなく、基本的に削減が難しい項目です。
しかし、材料を自社で調達して持ち込めば、機械加工の費用から材料費を省くことができます。材料の調達をもともと自社で行っていて、「自社で調達するほうが安く済む」という場合は検討してみるとよいでしょう。
ただし、固定に必要な「掴み代」や、削る部分である「削り代」も含めて材料のサイズを考えなければならない点に注意してください。特殊な形状に加工する場合は、掴み代の長さが指定されているケースもあります。
材料の持ち込みをする場合は、加工業者側に事前相談しておくことがおすすめです。
機械加工の費用は加工業者によって幅があるため、複数の企業から見積もりを取りましょう。複数の見積もりを比較すれば「どの業者が費用を安く抑えられるか」を判断できます。
ただし、費用が極端に安い場合は加工品の品質が低くなるリスクがあるので、「価格差につながっている費用項目と要因は何か」を調べることも大切です。例としてマシニングセンタのプログラムを構築して加工を行っている場合は、加工費を安く抑えられます。
機械加工チャージの金額はさまざまな要因で変動し、見積もりを取らなければ実際にいくらくらいかかるかを判断できません。1社のみの見積もりでは金額が適正かどうかを判断できないため、複数の企業から相見積もりを取って機械加工チャージの金額を比較しましょう。
見積書には加工方法や使用する材料、加工品の検査方法、おおよその納期といった加工業者の情報が記載されています。依頼したい加工内容について十分なノウハウ・製作実績を持っているかや、加工後の品質検査が行われるかを判断するためにも、見積もりを取ることは重要です。
なお、実際に機械加工の見積もりを取る際は、加工部品の寸法や仕様をまとめた加工図面が必要となります。加工図面の作成を依頼すると費用が高くなり、納品にかかる時間も長くなるため、できるだけ自社で用意したほうがよいでしょう。
機械加工チャージは、1時間あたりの加工賃として算出される費用であり、製造原価や見積もり、案件評価の重要な指標となります。加工費を算出する際には、「機械加工チャージ×加工工数」という基本式が用いられ、設備や加工方法、地域、企業規模などによって金額は大きく変動します。
コストを抑えるには、初期費用を見直したり、複数企業からの相見積もりを取ったりするとよいでしょう。特に見積もりの取得は、実際の加工費用を正確に把握する上で不可欠であり、1社だけで判断せずに比較検討することが大切です。適切な加工チャージの理解と見積もり対応を行い、無駄のない製造プロセスを実現しましょう。
最新記事
人気記事