• ホーム
  • コラム
  • スロッター加工とは?メリット・デメリットと加工時の注意点を紹介
公開日: 2026.03.19
column

スロッター加工とは?メリット・デメリットと加工時の注意点を紹介

スロッター加工とは

スロッター加工は、金属や樹脂などの材料に精密な溝を形成するための切削加工技術であり、特に、回転体の動力伝達機構に不可欠な加工方法です。さまざまな形状に対応できることから、機械部品や精密装置の製造現場で広く採用されています。

この記事では、スロッター加工の基礎や他加工法との違い、メリット・デメリット、注意点を解説します。加工方法の選定に悩む製造担当者や、より高精度な部品加工を目指す技術者は、ぜひ参考にしてください。

会社パンフダウンロード

 

スロッター加工とは

スロッター加工とは、工作物の表面に直線的な切れ込みを入れる切削加工の一種です。形削り盤などの工作機械にスロッターバイトという切削刃を取り付けて、送り台を往復することで切れ込みを入れる加工を行います。

スロッター加工

スロッター加工によって製作可能な溝の形状は、主に下記の4つです。
 

キー溝
鍵穴のように、穴の内面に1本の溝を入れた形状です。キー溝を2つ入れた場合は「Wキー溝」と呼ばれます。
キー溝
スプライン
キー溝よりも多くの溝を入れた形状です。
スプライン
インボリュートスプライン
スプラインの一種で、溝の断面が台形をしていて力の伝達に優れた形状です。
インボリュートスプライン
角孔
四角形や六角形などの形状にくり抜かれた穴を作れます。
角孔

スロッター加工は主にギア・シャフト・プーリー・スプロケットなどのパーツに作られている穴に行われます。
 

他の加工方法との違い

工作物に直線的な溝を入れる加工方法には、他にも「ブローチ加工」と「キーシーター加工」があります。

ブローチ加工とは

ブローチ加工とは、工作物の穴内径にブローチバイトと呼ばれる専用刃を入れ、一気に引き抜くことで内面の切削加工をする方法です。

スロッター加工ではスロッターバイトを往復させて徐々に加工するのに対し、ブローチ加工は1回で加工を完了できます。

キーシーター加工とは

キーシーター加工とは、キーシーターカッターと呼ばれる専用刃を用いて、穴の内面に溝を入れる加工方法です。キーシーターカッターは剛性が高く、一度の加工で多くの材料を除去したり、複数の素材を加工したりできます。

ただし、キーシーター加工ではキーシーターカッターが穴を貫通するように動く関係上、穴に底が付いている止まり穴の加工はできず、加工できるのは貫通穴のみです。スロッター加工は止まり穴・貫通穴のどちらも加工できます。

 

スロッター加工で可能な加工方法

スロッター加工では、スロッターバイトを使い分けることでさまざまな形状の溝を作れます。スロッター加工で可能な加工方法は、主に下記の4つです。

インボリュート加工

 

インボリュート加工
インボリュート加工はギアやシャフトなど、回転体に作られている穴の内面に複数の溝を入れる加工方法です。インボリュートスプライン加工と呼ばれることもあります。溝は一つひとつの幅が狭く、断面は外側に向かって細くなる台形になっていることが特徴です。回転動力の伝達に優れていて、回転体を滑らかに動作させたいときに適しています。
キー溝加工
キー溝加工は、ギアなどの回転体に作られている穴の内面に、1本の溝を入れる加工方法です。軸側にキーとなるパーツを取り付ければ、軸の回転運動をギアに伝えられて回り止めとして機能します。キー溝加工は、スロッター加工の中で最もシンプルな加工方法であり、効率よく加工できるメリットがあります。
スプライン加工
スプライン加工は、回転体の穴の内面に溝を複数入れる加工方法です。キー溝加工と同様に空回り防止を目的としているものの、スプライン加工は溝数が多いため動力の伝達により優れています。
テーパー加工
テーパー加工は、内径にテーパー(傾斜)が付いている場合に、内径の角度に沿わせて溝を入れる加工方法です。また、ストレートになっている内径に角度の付いた溝を入れる場合も、テーパー加工と呼ばれることがあります。

 

スロッター加工のメリット・デメリット

スロッター加工は、ブローチ加工やキーシーター加工にはないさまざまなメリットがある一方で、加工効率にかかわるいくつかのデメリットも存在します。

製造業でスロッター加工の導入を検討している方は、以下で紹介するスロッター加工のメリット・デメリットを知っておくとよいでしょう。

 

スロッター加工のメリット

スロッター加工には、加工品の精度や対応幅などにかかわる3つのメリットがあります。

高精度の加工が可能

スロッター加工は工作物の表面をスロッターバイトで少しずつ削っていく加工方法であり、高精度の溝加工が可能です。溝の精度を高めると軸の動力を高効率で伝えられるため、精密さが求められる機械部品に適しています。

また、CNC(コンピュータ数値制御)でのスロッター加工を行う場合は、より加工精度が高い溝加工を実現できます。

さまざまな形状に対応できる

スロッター加工は、工作物に作られている穴の上部からスロッターバイトを入れて削る仕組みであり、穴の貫通の有無にかかわらず溝を入れられます。

使用するスロッターバイトを使い分けることで溝の入れ方を変えられる他、穴の大きさも小口径から大口径まで対応可能です。

さまざまな素材を加工できる

スロッター加工は一般的に硬度の高い素材に用いられていて、銅・アルミ・ステンレス・鋼などの金属や樹脂も加工できます。自動車・航空機や産業機械、医療機器や電子機器といった精密機械に使われる回転体への溝を入れる加工に、スロッター加工は適した方法です。

 

スロッター加工のデメリット

スロッター加工の主なデメリットは下記の2点です。

加工に時間がかかる

スロッター加工は溝を入れるために少しずつ削る加工方法であり、加工に時間がかかる点がデメリットです。特に溝を複数本入れるインボリュート加工やスプライン加工では、スロッターバイトを何回も往復させることになり、より多くの時間がかかります。

経験豊富な技術者が必要

スロッター加工の加工対象には金属製品などの硬い素材が多く、切り込み量や切削速度を調整しないと加工中に材料や刃が欠けたり、材料が変形したりする場合があります。スロッター加工で高精度の加工を行うには、形削り盤などの工作機械に慣れている経験豊富な技術者が必要です。

紹介したメリットとデメリットにより、スロッター加工は部品の大量生産よりも、高精度の部品を少数生産したい場合に向いています。

 

スロッター加工の注意点

スロッター加工では、スロッターバイトが材料を削るときに切削熱が発生します。切削熱は600~1,000℃程度と非常に高温であり、金属・樹脂などの変形を引き起こします。スロッター加工の精度を高めるには、切削熱を管理することが重要です。

切削熱は材料がせん断されるときに発生するため、材料のせん断が高速で行われないように工作機械の送り速度を適切なスピードに設定しましょう。さらに切削油を用いて材料の冷却・潤滑を促すと、切削熱が発生しにくくなります。

また、金属加工でスロッター加工を行っているときは金属粉が発生することにも注意してください。金属粉が作業者の目に入ると失明の危険があり、呼吸によって体内に入った場合にも健康被害が発生するリスクがあります。

加工時の金属粉による身体への影響は、作業者が防塵ゴーグル・防塵マスクを適切に装着すれば防げます。加工中は欠けた刃が飛んだり、重量のある材料が落下したりする危険もあるため、作業服・保護手袋・安全靴も着用しましょう。

 

まとめ

スロッター加工は、止まり穴や貫通穴のいずれにも対応でき、高精度かつさまざまな形状の溝加工が可能な加工方法です。ただし、加工に時間がかかることや、技術的な知見が求められる場面もあるため、用途や生産体制に応じて加工方法を判断しましょう。切削熱や金属粉への対策といった安全管理も求められるため、設備環境や作業体制の整備も大切です。

高精度な少量部品の製造を行う現場において、スロッター加工は重要な役割を果たしています。

 
会社パンフダウンロード

おすすめの記事

  • column
    2024.07.05
    旋盤加工とは?使用される機械や加工の種類についてご紹介
  • column
    2020.02.19
    機械加工の基礎知識|加工方法や工作機械の種類、図面記号を解説
  • column
    2025.06.13
    金属加工費の相場はいくら?費用相場の考え方やコスト削減方法も解説
お問い合わせボタン
お役立ちBOOKダウンロードはこちら