自動車や電子機器、医療機器など多様な業界で活躍する製品の多くには、板金と呼ばれる金属製の部品が用いられています。これらの製品を新たに開発する際や、すでに開発した製品のコストダウンを目的に改良を行う際は、試作品がつくられます。
そして、試作品製作に欠かせないのが「試作板金」です。試作板金を活用することで、設計の適正評価や量産に向けた改善を効率的に進められます。
そこで今回は、試作板金の概要から量産板金との違い、さらに試作板金業者を選ぶときのポイントまで詳しく紹介します。
試作板金とは、板金加工が施される機械や製品の量産体制に入る前に、形状やスペックの確認を目的に行われる板金加工の技術・作業、またはその試作品となる加工物そのもののことです。主に、新製品の開発・設計時や既製品のコストダウンに向けた改良の際に活用されます。
試作板金は、設計図や図面を見ただけでは分からない課題を洗い出し、材料の選定、切断加工、曲げ加工、溶接加工、仕上げまでの各工程において、より優れた精密板金加工を行えるように最適な加工方法を模索しながら製造されます。特に、短い製作期間で精度の高い試作品が求められるケースにおいては、試作板金の技術が重要な役割を果たします。
試作品の製作は、精密板金を得意とする専門業者に依頼されることが一般的で、1個からの小ロット生産に対応できる業者も多いことが特徴です。
板金加工とは?分類や特徴、加工の工程を解説
試作板金は、さまざまな用途で使用されています。代表的な使用用途は下記の通りです。
●精密板金の試作
試作板金は、新製品の開発や設計変更段階において、形状や機能、デザイン、組立性の確認を行うための試作品を製作する際に用いられます。
●少量生産
製品の量産や市場投入前の試験販売のほか、特注品・限定品・カスタム製品などで少量のみ必要な場合にも試作板金が用いられます。
●治具・工具部品の製作
製造現場での作業効率向上を目的とした特定用途の治具や、専用工具のカスタム部品としても活用されます。
●展示会用モデル
製品の外観や機能をプレゼンテーションするための試作品・デモンストレーションモデルの製作にも試作板金が使用されます。
試作板金は、加工方法によってさまざまな種類に分けられます。下記は、試作板金加工の主な種類です。
●レーザー加工
レーザー加工とは、金属板にレーザー光を当てることによって発生する熱エネルギーによって、余分な部分を融解・蒸発させながら任意の形状に整える加工方法です。レーザー加工機からの照射光の強さや位置を簡単に調整できるため、難易度の高い複雑形状の試作板金にも柔軟に対応できるほか、製作期間も比較的短い点が特徴となっています。
●タレパン加工
タレパン加工とは、薄い金属板を加工機のタレットとパンチと呼ばれる金型で挟み込み、さまざまな形状に打ち抜く加工方法です。「タレットパンチプレス加工」の略称で、プレス加工の一種となります。
●曲げ加工
曲げ加工とは、板金を曲げて変形させるというもので、最も基本的な加工技術の1つです。一般的に曲げ加工では、プレスブレーキやベンダーといった加工機が使用されます。
●絞り加工
絞り加工もプレス加工の一種で、板金に穴を開けたり穴の縁を曲げたりして、平面の板から円筒、角筒などあらゆる形状に成型する加工方法です。
試作板金と量産板金には、目的や工程、製造方法に大きな違いがあります。それぞれの特性を理解することで、どちらを選ぶべきかを決める際の参考になるでしょう。
以下では、試作板金と量産板金の違いを「生産目的」「生産スピード」「生産コスト」の3つの観点から詳しく解説します。
試作板金は、新製品の開発や設計段階における課題の抽出や形状や機能の確認のほか、材料や加工方法の最適化、コストダウンの検討、さらに市場投入前の評価などを目的に生産されます。あくまで試作品となるため、小ロットかつ短納期での生産が一般的であり、依頼ごとの柔軟な仕様変更も可能です。
一方の量産板金は、試作段階を経てすでに工程設計が確定した製品を効率的に大量生産することを目的に生産されます。量産では、製造コストや生産スピードを重視するほか、同じ仕様を安定的に繰り返し生産することが求められます。
試作板金は基本的に小ロットでの製造となることから、生産スピードの速さが求められます。板金製作そのもののスピードだけでなく、設計図面を送った後の見積もりから納品にいたるまでの全プロセスにおける対応の素早さが重要とされています。
一方で、大量生産が基本となる量産板金は、当然ながら1つの板金部品を多く生産するためにもスピードが求められるものの、安定的かつ計画的な生産のほうが重要視される傾向です。
小ロット生産が基本となる試作板金は、1個あたりの生産コストが高くなります。なぜなら、試作板金の製作に必要な準備作業が1個あたりにかかるためです。
試作板金業者が行うデータの作成や型の準備、試作品のテストなど、初期の準備作業には時間とコストがかかります。製作数が1個の場合、これらの準備にかかる費用が1個にすべて反映されるため、単価が高くなるのはごく自然と言えるでしょう。
一方の量産板金では、試作板金に比べて生産コストを抑えやすい点が特徴です。量産板金は初期の段取りにかかるコストが多くの製品に分散されることや、作業工程が定型化された量産体制で生産が行われることが理由として挙げられます。
とは言え、試作板金が必ずしも高いコストがかかるわけではありません。
例えば、最初から金型や加工治具を製作して使用する場合、多額の費用が必要となります。しかし、試作板金を用いて1つのパーツを活用すれば、製品の形状や仕様を検討しながらコストダウンの可能性を探ることができます。そのため、1個あたりの単価が高い試作板金でも、最終的な製品全体のコストを考えると、結果的に大きなコスト削減につながりやすいのが特徴です。
板金加工全般における対応可能な厚みは、業者が有する設備・技術や取り扱い実績によって異なるものの、一般的には「0.05mm」というごく薄い金属から数十ミリの厚さまで対応しています。
また、板金加工の種類によっても加工の精度は変わり、通常の板金加工では比較的広範囲な厚みが扱われます。一方で、精密板金は通常の板金加工と比べて厳密な寸法精度や精度の高い技術が求められるため、より質の高い仕上がりが期待できます。
ただし、対応可能な厚みは加工形状や条件によって異なる場合があります。具体的な厚みについては、各業者が提供する試作板金サービスや設備に依存するため、問い合わせの際にしっかり確認しておくことが重要です。
試作板金業者を選ぶ際は、費用や対応力だけでなく、「対応素材」「加工精度」「納期」の3つのポイントもチェックしておくことが大切です。ここからは、それぞれのポイントや注意点について詳しく紹介します。試作板金の加工依頼をしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
板金加工には、アルミニウム、ステンレス、チタン、鉄などさまざまな金属が用いられ、素材によって割れやすさや曲げやすさといった性質も異なります。加えて、どのような金属を用いた板金加工を得意としているかは、試作板金業者によって大きく異なります。
試作板金の品質を確保するためには、まず素材の選定が必要です。質の高い仕上がりを求めるには、選定素材に応じた高い技術力を有する試作板金業者を選びましょう。
また、特殊な金属を用いたいときは「試作板金業者が十分な在庫を抱えているかどうか」も要チェックです。十分な在庫のない試作板金業者に依頼した場合、素材の入荷を待つ必要があることから長めの納期が設定されやすい点に注意しましょう。
板金加工では、設計上の寸法と実際に生産した加工物とで少なからず寸法に狂いが生じます。指定した寸法に対する誤差の上限は「最大許容寸法」、下限は「最小許容寸法」と呼び、両方の差は「寸法公差」と呼ばれています。板金加工品の寸法公差が小さいほど精度が高く、高品質であると判断できます。
加工精度が高いほうが望ましいのは当然ですが、必要以上に高い精度を追い求めるとコストもかさむ傾向にあります。そのため、まずは「最低限必要な精度」を明確にした上で、求める精度に応じて適切な加工設備と加工技術を有する試作板金業者に見積依頼することが大切です。
試作板金は、一度の製造で完璧な加工物が完成することは少なく、試行錯誤を繰り返しながら最適な加工方法を見つけ出すのが基本です。当初の納期からは遅れることも多々あり、製品の開発・製造スピードにも影響を与えかねません。
納期が大幅に遅れると、他社との開発競争に遅れを取る可能性があるため、できるだけ早く納品されることが重要です。したがって、見積もりから納品まで短納期で対応できる試作板金業者を選ぶことが望ましいでしょう。加えて、仕上げ加工が必要ない箇所をあらかじめ伝えることで加工工程が減り、納期短縮に貢献できます。
試作板金とは、新製品の開発や設計段階における課題の抽出や形状や機能の確認のほか、板金材料や加工方法の最適化、コストダウンに向けた改良を目的に行われる板金加工の技術・作業、またはその試作品となる加工物そのもののことです。
試作板金の製作を依頼したいときは、「対応素材」「加工精度」「納期」の3つのポイントをチェックし、自社のニーズに適した試作板金業者に依頼しましょう。
株式会社エージェンシーアシストでは、試作品や少量ロットの板金加工にも対応しています。「まずはどのような加工ができるのか見てみたい」という方は、下記のページで加工事例をご確認ください。
試作板金の依頼をご検討中で、「費用の目安を知りたい」「加工について相談したい」という企業ご担当者様は、ぜひ下記よりお気軽にお問い合わせください。
エージェンシーアシストは、試作板金の加工から表面処理まで対応可能です。品質保証まで行いますので品質面もご安心ください。実績はこちら
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