板金加工とは、金属の板をさまざまな形状に成型・加工する技術のことです。人々が毎日当たり前のように目にする自動車や家電製品のほか、工場・製造業や医療業界などで用いる産業機器の部品には板金加工が施されており、多岐にわたる分野で欠かせない技術となっています。
板金加工を依頼したいときは、まず板金加工業者に見積もりを依頼する必要があります。この見積もりは、適切な業者を選ぶための第一歩であると同時に、コストの無駄を抑えるための重要なポイントでもあります。
そこで今回は、板金加工の見積もり項目や価格に影響を与える要素について詳しく解説するとともに、費用を抑えるための方法についても分かりやすく紹介します。
そもそも板金加工とは、金属素材の板を加工してさまざまな形状に成型する技術を指します。機械加工の1つである「塑性加工」に分類される加工方法であり、荷重を加え続けて「降伏点」と呼ばれる一定のポイントを越えると元に戻らなくなるため、技術を要することが特徴です。
普段目にする自動車や家電製品、さらにはエレベーターといった機器・設備など、多くの製品は板金加工によって製造されています。
自社で板金加工が必要な製品を開発・製造する際は、板金加工のプロである専門業者へ問い合わせ、必要事項を伝えた上で見積もりをとる必要があります。
この見積もりは、単に依頼費用を把握するだけでなく、依頼内容について業者と認識をすり合わせる重要なプロセスでもあります。加工方法や素材の選定、納期に関する要望などを事前に確認することで、仕上がりのイメージを共有しやすくなり、後のトラブルを防ぐことにもつながるでしょう。
板金加工における見積もりの基本項目としては、「材料費」「加工費」「特殊加工費」があります。
項目 | 詳細 |
---|---|
材料費 | 加工部材にかかる母材(金属材)の費用 |
加工費 | 加工にかかわる設備費・備品費・人件費 |
特殊加工費 | 熱処理や仕上げなどの特殊加工を追加で実施した場合にかかる費用 |
そして、これらの費用や合計額は、加工方法や材料の種類、ロット数、特殊加工の有無や内容によって左右されることが特徴です。
ここからは、板金加工の見積もり価格を左右する4つの要素について、それぞれ詳細を解説します。
板金加工の加工方法は、「手板金」と「機械板金」の2つに大別されます。手板金は専用のハサミやハンマーを用いて職人が手作業で加工する方法で、機械板金は専用の機械を用いて金属板を加工する方法です。通常の板金加工(量産板金)では、生産効率を重視し、専用の機械を用いた機械板金が一般的に採用されます。
機械板金には、切断加工や曲げ加工、溶接加工、穴あけ・タップ加工など、さまざまな加工方法があります。加工方法によってそれぞれ作業工程が異なるため、費用にも差が生じる点に注意が必要です。
基本的に、複雑な形状の曲げ加工や精密な溶接加工は高度な技術や専用の治具が必要となるため、費用が高まる傾向にあります。また、切断加工や穴あけ加工では使用設備や求める加工精度によって価格が変動することを覚えておきましょう。
板金加工の見積もりにおいて、使用する材料は費用を左右する大きな要素の1つです。一般的に、板金部品は「ステンレス>真鍮>アルミ>鉄」の順で高価となる傾向にあります。
コストパフォーマンスを重視して材料を選定したいのであれば、比較的安価な鉄やアルミニウムが適しています。一方で、耐久性や美観を重視するならステンレスや真鍮がおすすめです。
また、ステンレス鋼は耐食性や耐熱性に優れている一方で、加工が難しく手間がかかるため、見積もり価格は高くなりやすいでしょう。予算はもちろん、製品の用途や要求される特性に応じて最適な板金加工部品を選ぶことが重要です。
板金加工の見積もり価格は、ロット数によっても異なります。ロット数とは、一度の生産で製造する数量のことです。
基本的に、ロット数が多いほど1個あたりの加工単価が低くなる傾向があります。板金加工業者では、製造量に関係なく準備や段取りに一定の手間がかかるため、少量生産では1個あたりの負担が大きくなりがちです。例えばロット数が1個なら工賃がその1個にすべて反映されるため、1,000個の注文に比べて1個あたりの単価は高くなる傾向があります。
ロット数が10個・100個・500個程度の場合、それぞれコストに与える影響は以下のようになります。
10個程度の発注 | 工賃が少数の製品に分散されるため、1個あたりの単価は割高になります。 |
---|---|
100個程度の発注 | 工賃が分散され、ある程度のコストメリットが生じ始めます。 |
500個程度の発注 | 量産による大幅なコスト削減が期待できます。 |
しかし、少量生産だからといって必ずしもコストが高くなるわけではありません。設計や加工方法を工夫すれば、少量生産でもコストを抑えることは十分可能です。
株式会社エージェンシーアシストでは、試作板金加工や少量からの精密板金加工を得意としており、ニーズに合わせた柔軟なサービスの提案が可能です。
板金加工の依頼を検討中の方は「株式会社エージェンシーアシスト」へ気軽にご相談ください
板金加工においては、基本的な成形や切断のほか、仕上げや機能性を向上させるための特殊加工が行われることがあります。代表的な特殊加工には、「表面加工」「塗装」「メッキ」「マーキング・印刷」などがあり、それぞれの加工内容によってコストも変動します。
カテゴリー | 主な加工内容 | 目的・特徴 |
---|---|---|
表面加工 | 研磨、バフ仕上げ、ヘアライン加工、エッチング | 見た目を美しくし、耐久性を向上 |
塗装 | 焼付塗装、粉体塗装、電着塗装 | 防錆・耐久性UP、デザイン性向上 |
メッキ | 亜鉛メッキ、ニッケルメッキ、クロムメッキ | 防食・耐久性を強化 |
マーキング・印刷 | シルク印刷、レーザーマーキング | 型番・ロゴ・目盛りを印字 |
板金加工の見積もり価格は、こうした特殊加工の有無や求める精度で大きく変わるため、仕上がりの品質とコストのバランスを考慮しながら選定することが重要です。
板金加工の見積もり価格は、加工方法や板金部品の材質、発注方法などによって大きく変動します。特に小ロットでの生産や特注品は価格が高まる傾向にあり、想定以上に高額な見積り価格が提示されるケースも珍しくありません。
無駄な費用を抑えつつ適正価格で板金加工を依頼するためにも、コスト削減に役立つポイントをおさえておくことが大切です。最後に、板金加工の見積もり価格を安くする方法を4つ紹介します。
板金加工の依頼費用をできる限り安く抑えたいなら、複数の板金加工業者からの見積もりを取ることが大切です。
1社のみの見積もり依頼だと、提示された価格が適正価格なのかどうかがつかめず、相場よりも高い価格で発注してしまう可能性もゼロではありません。しかし、相見積もりを取っておくことで適正な価格帯を把握できるほか、各社の価格設定や加工内容の違いが明確になり、自社にとって最適な業者を選べるようになります。
とはいえ、単純に価格の安い業者を選べば良いというわけではありません。あまりに安すぎると品質や納期の面で問題が発生する可能性があるため、見積もりの内容と価格のバランスをしっかりと比較し、品質・納期・価格の総合面で納得できる業者を選ぶことが重要です。
板金加工を行う際に用いる設計図や図面データの形式は、業者によって異なります。一般的に、2Dデータを取り扱う業者もあれば、3Dデータを取り扱う業者もあります。
2Dデータは平面で表現された図面であり、簡単な形状や製品加工を行う際に適しています。対して、3Dデータは立体的な板金形状を詳細に表現でき、複雑な形状や高精度な加工を行う際に重宝されます。
2Dデータを取り扱う板金加工業者に3Dデータを提供した場合、業者はその3Dデータを2Dデータに変換する必要があります。この変換作業には手間がかかることから、見積もり価格が上がりやすくなるほか、納期に影響を及ぼす可能性もあります。
そのため、3Dデータを取り扱う業者には3Dデータを提供し、2Dデータを取り扱う業者には2Dデータを渡すなど、提供する設計データの形式は依頼業者の取扱形式に合わせることが最適です。
短い納期で板金加工を依頼を希望した場合、追加料金が発生する可能性があります。反対に、長めの納期設定は追加料金を回避できるだけでなく、価格交渉の重要な材料にもなり得ます。
一般的に、板金加工の納期は依頼する内容やロット数、業者の繁忙期などによって異なりますが、平均的な納期は約1週間~3週間程度です。小ロットやシンプルな板金加工の場合は数日~1週間程度で納品されることが多い一方で、複雑な加工や大量生産を伴う場合は、2週間以上かかることもあります。
余裕をもった納期設定によって価格交渉を成功に導けるだけでなく、業者との調整業務の効率化も図れるでしょう。
材料費を削減するためには、自社で材料を調達して持ち込むのも有効な方法です。自社で直接材料を調達することで、業者に支払う材料費を原価レベルまでに抑えられる可能性があります。
ただし、加工時は材料の一部を削るため、あらかじめ削り分を考慮してひと回り大きいサイズを選ばなければなりません。また、流通の少ない特殊な材料を使用したい場合は、入手までの期間を考慮して事前に手配しておくことが重要です。
なお、少量の板金加工を依頼する場合には、業者が提供する端材を使用できるケースもあります。業者側で余っている素材で対応してもらえると、材料調達の手間が省けるだけでなく、材料費を安く抑えられる可能性も高くなります。特に少量の依頼では、業者が提供する端材を利用できるケースが多いため、一度確認してみると良いでしょう。
板金加工の見積もりは、適切な業者を選ぶための第一歩であり、コストの無駄を抑えるための重要なキーポイントでもあります。基本的な見積り項目には「材料費」「加工費」「特殊加工費」があり、加工方法やロット数、特殊加工の有無や内容によって左右されます。
板金加工の見積もり価格を安くするためには、複数の業者に見積もりを依頼するほか、設計図面の形式は依頼業者の取扱形式に合わせたり、納期を長めに設定したりすることが大切です。
株式会社エージェンシーアシストでは、試作・少量の板金加工依頼に対応しております。まず加工品の一例を見てみたいという方は、以下のページをご覧ください。
こちらもチェック!板金・レーザー加工・溶接加工などの加工品の一例はこちら
板金加工の依頼を検討している企業担当者の方で、どれくらいの費用がかかるのか、また加工についての相談をしたいという方は、以下からぜひお気軽にお問い合わせください。
30年以上の調達実績があるエージェンシーアシストでは1000社を超える協力企業数で、多品種部品を一括手配していただけます。
フライス・旋盤など多品種対応できるエージェンシーアシストの加工技術一覧はこちら
エージェンシーアシストは、材料の手配から加工、表面処理まで含めて一社購買で調達します。
部品1個からの多品種小ロットで対応可能です。
さらに、社内の品質管理部門で検査済みの製品をお届けします。
見積り依頼は図面を送るだけで完了!お気軽にご相談ください。
最新記事
人気記事